「六人の嘘つきな大学生」読了

4月某日、六週に一回、美容院で三時間かけて髪の毛をクルクル巻いている時のじっくり読書タイム。

今回は浅倉秋成著「六人の嘘つきな大丈夫」を読みました。就職活動を舞台にした学生たちの表の顔、裏の顔を見事に描き出した一冊。

みんなで一緒に一括採用されて同期入社しようと爽やかなチームとしてまとまっていく序盤から一転、内定の条件変更があり最終選考での突然の告発文の出現からどんどん暗黒展開へ突入しチームはあっさり瓦解。結局最後まで告発文が運良く晒される事が無かった学生1人が採用される。

そこから数年が過ぎ、当時告発文を準備した「犯人」が病気で亡くなったのを機会に、改めて当時の「事件」を振り返ってみると、調べれば調べるほど事実は全く異なっている?というのが詳らかになっていくストーリー。

たぶん、人間誰しも墓場まで持って行きたいような黒歴史が多かれ少なかれあって、それが就職活動という人生においてその後をある程度左右する中々の一大イベントで公に晒されるという設定が面白いのと同時に、自分に置き換えた時にとてつもない不安感に苛まれながら読み進められる感覚を味わえる。

それでいて、登場人物それぞれのの過去の暗い業に対して別の側面からの全く捨てたものでは無いというエピソードが披露されることで伏線を回収し、結末として「あぁ、良かったな」と思えるところまで印象を引き上げる事ができるのがこの物語の巧みな部分だと言えましょう。

僕は新卒時の就職活動をほぼ経験していないのですが、いま採用面接をする立場として学生側は良くも悪くも自分を着飾って面接に臨んでくるだろうし、企業側ももしかしたら実態よりも盛って魅力的な職場だと喧伝しているような面はあると思うので、色々と考えさせられる作品であると感じました。


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