恩田陸「蜜蜂と遠雷」読了

5月某日、ずっと気になっていた恩田陸の「蜜蜂と遠雷」を読み終える。3年ごとに開催されるピアノコンクールを舞台にした群像小説で、直木賞と本屋大賞をダブル受賞し、映画化もされるなどして話題になった本作品は、かなりの頁数ではあるものの著者らしい読みやすさの文体であっという間に読むことができます。

クラシック音楽に詳しい人の中では「設定がありえない」と評するものもあるようですが、シンプルに物語として楽しむことができ、また特定の主人公が存在するのではなく、様々なコンクール参加者の視点でストーリーが展開される群像劇という形をとっているので、読者によって感情移入できるキャラクターが選べそうなのが読みやすさと面白さにつながっているのだと思います。

特に二次予選くらいまでは作中の音楽がそのまま聞こえてくるようで、テキストを読みながらもまるでホールで聴いているような臨場感あふれる作品といえるでしょう。さすがに三次から本選にかけては音の表現に限界が見え隠れしてきて、少しだけ尻すぼみになるような印象もなくはないけれど、それでも素晴らしい作品だと思う1冊です。

読んでいない人はぜひ手に取ってページをめくっていただきたいと思います。映画は見ていないから何とも言えないですが、映像よりも活字で読んだ方が良さそう。

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